東京都市大学 人間科学部児童学科の教員による、12月まで毎月一回の公開講座シリーズが今年もスタートしました。初回は、10月14日(日)児童学科の原田留美教授による講演会「子どもと楽しむ絵本の世界」。児童文学が専門の原田先生による絵本の選び方のポイントや読み聞かせの時に気をつけたいことなどの講演あり、学生による読み聞かせありの充実した1時間半。ご参加くださった親子の皆さまにとっても、日頃の学びを実践する機会にめぐまれた学生にとっても、楽しく実りある時間となったのではないでしょうか。
「絵本の読み聞かせ」というと「子どもに絵本を読んであげたいけど、どんな絵本を選べばいいかわからない。どう読んであげたらいいのかもわからない」という声が聞こえてきそうです。でも、原田先生は「読み聞かせは心のだっこ」と表現されました。「読み聞かせ」という言葉が少し強い印象を与えるようなら「読み語り」と言い換えてもいいかもしれません。「いいお母さんは絵本を読んであげなくちゃ」という義務感とか、絵本を読むことで得られる「効果」を求めるのではなく、絵本を「いっしょに楽しむ」ことは「だっこ」みたいに心地よくて、読み手と聞き手の心の絆を深める力があると原田先生はおっしゃいます。
そんな「読み聞かせ」にも気をつけたいポイントがいくつかあります。
ひとつは、「絵本はおとなが子どもに読み聞かせるもの」ということ。絵本は「耳で聞く」もの。「字が読めるようになったら自分で読んでね」ではなく、小学校1,2年生くらいまではどうぞおとなが読んであげてください。子どもは「文字を読んで理解する力」より「聞く力」の方が発達しているのです。
二つめは、絵本は「あそび」だと認識すること。絵本を勉強の道具にするのは望ましくありません。物語を通して様々な価値観、様々な生き方とふれあうことができますが、絵本をつかって何かを教え込もうとしないことです。
三つめは、絵本選びの際には「子どもの気持ち」を大事にすること。どれもおとなの都合や思いが先走ってしまいがちなポイント。肝に銘じたいところです。
では、どんな絵本を選べばよいのでしょうか。何冊か、書名を挙げて、ときには実物を手にとって、絵本を選ぶ時のポイントを原田先生が具体的に教えてくださいました。
中でも「1回目は絵だけをみて絵本をめくる。2回目はストーリーと絵を照らし合わせる。絵と文の進行が合っていて、絵だけで話がわかるものを選びましょう」というアドバイスに納得。もちろん、子どもの発達段階にあわせた絵本を選ぶことも大切です。絵本を読むときは、あまり大げさにする必要はなく、ゆっくり、はっきり、子どもを意識しながら読んであげればいいそうです。声色をかえたり、おおげさに抑揚をつけなくても、「心のだっこ」を思い出して、子どもに寄り添って読んであげればいいということですね。そして、まずはおとなが絵本を楽しんでください、という原田先生のお話に「絵本の読み聞かせは子どものためと思っていたので、まずは自分が楽しめるようになろうと思いました」と参加者の方から感想をいただきました。
さて、今回の講座は子連れOK(というか、親子での参加が条件)、託児つき。おかげで「ゆっくり先生のお話が聞けて良かった」というお声をたくさんいただきました。1歳くらいまでのちびっこちゃんはプロの保育士さんといっしょに。
学生による読み聞かせタイムのあとは自由に過ごす時間。読み聞かせをする姿も見られ、「絵本はおとなと子どもがいっしょに楽しむのが一番!」を実感していただけたのではないでしょうか。イベントが終わって、片付けも終了。「さようなら」となるかと思ったら、学生たちは「絵本を持つときはこうした方がよかったよね」と反省会を始め、さらには発声練習まで!
参加者の方から「笑顔が素敵だった」「子ども目線でいっしょに遊んでくれてよかった」「すごく子どもが楽しそうだった」「子どもとの距離感がちょうどよかった。積極的すぎると子どもが照れてしまうので」といったお褒めの言葉を頂戴しました。その笑顔は、ただの「ニコニコ」ではなく、どうしたらより良く子どもと接することができるかを日々学び、実践するなかで得たものが土台にあるからこその笑顔なのだと、反省会の様子をこっそり見ながら感じました。
東京都市大学 人間科学部児童学科の教員による公開講座、次回は11月11日「親子で遊ぼう!子どもを育む遊びの世界」 です。同じく12月9日には「コネコネ隊と粘土で遊ぼう」の開催が予定されています。皆様のご参加、お待ちしています!