7月16日に等々力キャンパスにおいて、学術講演会を開催しました。スウェーデンで活躍される女優・歌手のレーナ・リンデル氏を招き講演を行っていただきました。
リンデル氏に、スウェーデンにおける子ども観と教育との関係、子どもの文化(文学と演劇)についてお話していただきました。
お話の内容を要約すると以下のようになります。
スウェーデンでは、第二次世界大戦後、それ以前に主流だった大人目線のしつけを反省する機運が高まりました。1960年代以降、子どもの目線に立った幼児教育が発展し、1980年代に子どもは大人社会における弱者であると皆が考えるようになったことを機に、子どもへの体罰を禁止する法律、子どもオンブズマン制度の設立など子どもの人権を擁護する社会制度が整いました。
現在では、子どもたちに話をさせて議論をさせること、子どもたちに自分の考えを絵に描いて示すなど視覚的表現を促すこと、子どもたちが議論や表現できる状況を教師が設定することから成り立つ、対話を重視する教育方法が学校教育において、重要視されています
その背景には、子どもとは、もともと能力を有する個性的な存在であり、大人の役割は、子どもがもともと有している個性を発見し、さまざまな能力を伸ばしていくことにあるという、スウェーデンでは一般的な考え方があります。
また第二次世界大戦後、子どもと一体感を持って、子どもの視点で作品を描く児童文学作家が登場しました。その代表作が「長くつ下のピッピ」であり、主人公のピッピはユニークな個性と創造性をもつ新しい子どもとして描かれました。1960年代以降、様々な「家族」がテーマとして取り上げられ、1960年代から1970年代には、シングルマザーやシングルファーザーの家庭が、2000年代には同性婚の両親や親子間の友情が描かれるようになりました。
スウェーデン国内の子どもと若者のための劇団は、「全ての子どもは芸術文化に触れる必要がある」という考えのもと、幼稚園を訪問し上演するなどの活動を行っています。対象年齢によって、上演時間、その年代の子どもの視点が描かれているかが、重要視されます。
子ども時代に、以上のような教育・文化を受容したスウェーデンの若者たちは、高校卒業後、仕事を求めて海外に出る者が多いのですが、彼らは海外で雇用主から、チームワーク、独自性、自立性、創造性等の点で高い評価を得ています。